Salmon of Knowledge
むかしむかし、フィン・マックール(アイルランドの フィアナ騎士団の偉大なリーダー)がまだ若い男の子だ ったときのことです。 フィンは修行のため、フィネガス という老人に弟子入りするように言われ、家を出まし た。フィネガスとは、ボイン川の岸に住んでいる賢者 で、アイルランド中 の人々が知っている有名な詩人でし た。 フィネガスは、詩を書いて暗唱するのが上手だった だけでなく、アイルランドの誰よりも鳥や動物や植物や 星の神秘などすべてについて知っていました。 フィン は、フィネガス老人の素晴らしい話を聞くのが大好き で、やがてフィネガスの言葉を復唱できるようにもなり ました。フィンはフィネガスからたくさんのことを教え てもらう代わりに、家事や釣りの手伝いをしていまし た。 フィネガス老人がいかに博識でも、もちろんすべて のことを知っているわけではありませんでしたから、好 奇心旺盛なフィンの質問にほとんど答えていましたが、 時には答えに困ることもありました。 「あらゆる知識を得る方法はあるのでしょうか?」
ある日フィンは、フィネガス老人に尋ねました。 フィネガス老人もかつてフィンと同じ疑問を持っていました。 フィネガスは『あらゆる知識を 得る方法』を見つけるために、長年ボイン川のほとりで暮らしていたのです。なぜなら彼は以前、年老いたドルイド教 (ケルトの古代信仰)の僧 からこんな話を聞いたからです。 『突き出たハシバミの木陰の静かな暗い池に住んでいるのは“知恵のサーモン(鮭)”だ。そのサーモンはあらゆる知識を身につけている。この不思 議なハシバミの木の実を食べたために、“知恵のサーモン”は世界中の知識を得たのだ。』 さらに僧は、『“知恵のサーモン”を食べた人は、それと同じ知識を得られるのだ。』と予言しました。 フィネガスはこの知恵のサーモンを釣り上 げ、世界中の知識を得たいと考え、数年間ボイン川のほとりに住み続けていたのですが、残念ながらまだそれを釣り上げたことはありませんでし た。 しかしある日、いつものように川に釣りをしに行ったフィネガスは、とうとう念願の“知恵のサーモン”を釣り上げたのです。フィンが弟子入り して間もないころのことでした。 「釣ったぞ!釣ったぞ!」と、フィネガスは大喜びで叫びました。 彼はすぐに釣糸を巻き上げ、腕に知恵のサーモンを抱えているフィンに駈け寄 りました。「すぐにそれを料理しろ!」と、フィネガスはフィンに命じました。いよいよ知恵のサーモンを食べられる時がきたのです。喜びを隠し きれないフィネガスは、興奮して踊ったりスキップしたりしました。 知恵のサーモンを料理するために火をおこし串を用意しているフィンに、フィネガスは、 「いいか、料理はしろ。だが、何があっても一口たり とも食べてはいかんぞ!」と言い聞かせました。 フィンは頷いてフィネガスが追加の薪を取りに行っている間にサーモンを料理しました。 フィネ ガスが戻ってくると、サーモンはすでに料理されて、テーブルの上においしそうに並べられていました。さあ、いよいよ知恵のサーモンを食べて あらゆる知識を身につけるときが来たのです! しかし、フィネガスはふと横にいるフィンに目をやりました。そして、何かが違うことに気づきました。フィンの目にまるで知恵の光が輝いてい るように思えた のです。 「ま、まさか・・・お前、サーモンを食べたのか?」フィネガスは恐る恐るフィンに尋ねました。 「そんなことはしていませんよ。」と、フィンは答えました。 「正直に言え。じゃ、サーモンの皮を食べたのか?」と、フィネガスは続けて聞きました。 「そんなことはしていませんよ。」と、フィンは繰り返しましたが、「あ、でも、サーモンの串をひっくり返していた時、油がはねて指を火傷して しまったので、思わず親指を舐めてしまいました。」と答えました。 「ああ、それだよ・・・」と、フィネガスは肩を落としてフィンに言いました。
「お前は、私より先に知恵のサーモンを食べてしまったのだ・・・。予言通りだと、お前は世界中の知識を身につけたことになるのだ。」 フィネガスは残念で仕方がありませんでしたが、こればかりはどうにもなりません。知恵のサーモンを最初に口にした者だけがあらゆる知識をえ られるのですから・・・。 そして、フィネガスはフィンにサーモンを全て食べるように命じました。 言われたフィンは、サーモンを全て平らげましたが、別段前より賢く なったとは感じませんでした。フィンがフィネガスにそのことを伝えると、「お前が火傷した親指をもう一度舐めてみよ。」と答えたので、フィン はフィネガスの言うとおりに自分の親指に口をつけてみました。するとどうでしょう、たちまちフィンの頭に世界中のあらゆる知識が浮かんだの です。 「お前は、すぐに行かなければならん!もう私にはお前に教えることは何もない。お前は選ばれし者だ。賢い詩人に、戦士のリーダーになる運命 にあるのだ。」フィネガスはフィンにそう言いました。 知恵のサーモンを食べたフィンは、後に本当に賢い詩人に戦士に、そして素晴らしいリーダーになりました。 フィンは困難なことに直面するたびに親指を舐めてその知恵を使い、乗り越えていくことができました。 そうしてフィアナ騎士団(アイルランドで最も偉大だとされている)の偉大なリーダーとなったのでした。
According to Irish mythology the first thing to ever come into creation was a hazel tree, and in it's branches was contained all the knowledge of the universe. This hazel tree flourished over the Well of Wisdom (Tobar Segais) within which lived a great speckled salmon. The story goes that the salmon ate the hazel nuts which on one occasion fell into the well, thus acquiring all the wisdom of the universe.
It was foretold that the first person to catch and eat the salmon would gain this knowledge and that a man by the name of Fionn would be the one to do so. Nonetheless, many tried and failed, until a poet named Finnegas having spent seven years fishing the Boyne caught it. Finnegas instructed his apprentice, a young boy named Deimne Maol, to prepare it for him. Deimne burned his thumb bursting a blister on the cooking salmon. Instinctively he put his thumb into his mouth to ease the pain and in an instant acquired all its knowledge.
When Dimne brought the cooked meal to Finnegas, his master saw something in the boy's eyes that had not been there before. When asked by Finnegas, Deimne denied that he had eaten of the fish. When pressed, he admitted his accidental taste. What the old poet hadn't known was that Deimne had another name, given to him by his mother - Fionn, meaning fair haired one. It was this incredible knowledge and wisdom gained from the Salmon of Knowledge that allowed Fionn mac Cumhaill to become the leader of the Fianna, the famed heroes of Irish myth